第二十四回 “いざ旅立ち”といえども、、、

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。

喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。 http://endo-ryokyu.com/blog/


第二十四回

――前回、インド行きの片道切符で、旅にでられたところまで聞きました。
日本から世界に飛び出したときは、嬉しかったでしょうね?
というのも、聞いている私も、「えっ、とうとう旅にでることができたんだ!」と興奮したからなのですが、、。

住職:いやー、でも、、、それが実は、あのころの僕に、何をやっていても、特に嬉しさはなかったですよ。

――えー、そうなんですか?

住職:たとえば、明るい青春なんていう言葉は、まったくの幻想じゃないですか。

――それも、そうですね。今の私の発言は、小学校の入学式に出る子どもを見て、さぞ嬉しいだろうなあ、なんて大人が勝手に幻想しているのと同じようなものだったかも知れませんね。
それは大変、失礼しました。

住職:いやー、別にそういう意味じゃなくて、、、(ハハハ)。
ただ、今から考えると、あの旅は僕が子どもから大人になるための通過儀礼(イニシエーション)だったのではないか、と思うんです。

――というと?

住職:未開社会では今でも残っている通過儀礼ですが、子供は、死ぬほどの恐怖を体験して大人になる儀式をするんです。

――ああ、パンジージャンプなんかも、もともとは通過儀礼だったと新刊『気の幸福力』(法蔵館)に書かれていますね。

住職:人間は、そのような精神的体験をすることで初めて大人になることができるんですが、今の社会のシステムでは、それが完全に失われているんです。

――だから、なかなか大人になりきれない人が多いのですね。

住職:きっと、モンスターペアレンツとか、クレイマーなんかはそのような人たちなんでしょう。

――なるほど。

住職:で、その頃の僕自身は、そのような今までの自分(子供として生きてきた自分)をすべて突き崩すような体験を、心の底では求めていたのだと思います。
というのは、「自分は死ぬような想いを体験するために旅に出るのだ」、というようなことを、行く直前、人に語っていたのを憶えているからです。

――へぇー、、なんとなく、わかる気がします、、。

住職:できる限り最低の宿、最低の食事、そして徹底してお金を使わず、過酷で地を這い回るような旅をすることを自分に課しました。
それまでは長髪だったんですが、出発前に坊主頭にもしました。
今分析すると、旅にでたのは放浪のためだったのが、いつしか目的が、「徹底して、自分を変革するため」に変わっていたと思うんです。
そのちぐはぐな感じに、自分の旅を捉えきれない、という妙なもどかしさが多々ありました。

――じゃあ、嬉しさなんていうのはほど遠い話ですね。

住職:それに当時の自分には、レジャーとか、リゾートでのんびりするなんていう発想も皆無ですからね。
もう、なにごとも修行的にしか、ものごとを考えていなかったみたい。「やれやれ、、、。もうちょっと人生楽しめよ、おまえ」なんて、あの頃の自分に言ってやりたいですね。

――ははは。ところで、また、どうして最初の行き先にインドを選んだのですか?

―続く―